新年と人間

新年を迎えた。

平成29年が終わり、平成30年が始まる。

そして己の30歳の節目でもある。

20代が終わってしまった。30代が始まる。どんな30代にしようかと考える。色々な30代がありえる。どんな30歳になりたいか。

最近は、過去は可能性であり、年を追うことは、可能性をひとつづつなくしていくことなのではないかと感じるようになった。

自分が高校生の頃、どんな20歳になりたいか、色々な可能性があった。医者になることもできた。公務員になることもできた。エンジニアになることもできた。外交官になることもできた。その中から、自分の意志でもって、選ばれた姿が今の自分である。今の境遇、今の性格、今の収入、今の友人、そういうすべては、自分の意志によって成り立っている。

最近やはり悩むことが多い。自分の収入、自分の境遇、自分の歩んだ道。それらは、一般の普通とは少し違う。まして、同郷、同窓の人たちと比べると、収入も違えば待遇も異なる。見劣りする。そんな自分にどんな未来が待っているのだろうか、どんな30代を歩んでいくのだろうか、そんなことを考えると、新年早々、すこし俯き加減な気持ちになってしまうのである。

他人と比べることに意味はない、自分の人生を自分の生きたいように歩めばよい。そういう綺麗な言葉は、理想論として自分の骨身に浸み込んではいるのだが、市井の人間である以上、俗世に身を置いている以上、「比べる」ということはどうしても目の前に現れる。それが、優位か劣位か、そんな単純なことが、自分にとって簡単に気分を左右させてしまう。大いに劣位である。自分の性格もそうだ。僕は弱い人間だ。弱いからこそ努力をしてきた。それが意味のあるものかは分からない。しかし、弱さを克服するためには努力しかないと思って生きてきた。自分にないピースを埋めるものが努力であった。

僕は何をするために生きているのか。僕はどうなりたいのか。そんなことを考える。それは、例えば10年後とか20年後とか、そういうとても先の未来ではない。明日、明後日、1か月後、そういう、手を伸ばせば届く位置にある未来。これをどうやって描いていくか。それを考えることを先送りにして、時間を浪費していないか。

今の自分の気分がすぐれないのは、それが原因かもしれない。今一度立ち戻って、未来を考えないといけない。明日はすぐ来る。一週間後もすぐ来る。そうして1か月が経ち、冬が過ぎ、春が来て、一年が巡り巡って、その分自分も年を取っていく。

 

人間関係なんて、どうでもいいことだ。自分が大切にしている人たち。その人たちとの良い関係を維持することが大事。その場その場の関係は、もちろんそれは重要だけれど、それ以上に重要なことはたくさんある。人に傷つけられたり貶められたりもする。自分がしっかりと目標をもって、そのために一日一日、自分がすべきことを明確にしていて、その日一日でできたこと、できなかったこと、それらを反省して、明日に生かす。それができていれば、それ以外のことは、些細なことだ。でもそれが明確でなければ、自分が何が重要で何をすべきでどうあらねばならないかが分からず、些末なことに気を取られ悶々として落ち込んでしまうのだ。

例えば自分が低い地位だからと言って、利用されやすいと言って、人としゃべることが苦手だからと言って、それらをどうするかなんて、ずっと考えてきた。自分の性格と、もう10年近く向き合ってきた。それでも性格は変わらなかったし変えることができなかった。変わったのは自分の考え方だけだった。考え方が変われば、性格も少し変わるかもしれない。人間の性格は、関係によって変わる。家、職場、上司と部下、先輩と後輩、親と子、友人、恋仲。すべてにおいて変わる。そして自分が一番しっくりくるのがどれか、本当の自分がどれか、分からなくなる。一方で、本当の自分などないのかもしれない。自分の在り方、それは、自分で変えようというものではなく、意図せず関係の中に落とし込まれていった結果、自分というものができている。遺伝×関係×環境なのかもしれない。新しい「関係」に飛び込むとき、自分が馴染めるか、自分がうまくいくか、とても不安だ。いつまでたっても不安。特に自分に何もなく素手で立ち向かわなければならないときは。

自分の性格と向き合って、それでずっとやってきた。もちろん細かいところは変わらなければいけない。「関係」において上手に立ち回れなかったら改善しなければいけない。しかし、他人の立ち回り方を自分と比較して、自分が落ち込むのは、諦念同様、やめなければいけない。今の自分は今の自分以上にはなれない。それに、今の自分以外のやり方は、頑張ってみても多分できない。それは、己の経験から立証されている。僕は、僕のやり方でしかできないし、僕のやり方は、たぶん他の人はできない。

苦しいときもある。つらいときもある。そういうときは、どうか自分を卑下しないでほしい。改善させることは大切だけど、現状を卑下してはだめだ。なぜなら、変わることは急にはできない。当面は自分は自分でしかない。そして、変わったことには立場も関係も変わりつつある。過ごしやすくなるかもしれない。そのためには、真面目に頑張ることだ。今日、昨日のたかだか数日の些細な出来事なんかで、くよくよしたり、めげたりしてはいけない。ぐっとこらえて我慢して、自暴自棄にならないで、明日やること、明後日やること、今年やることを見直して、自分にできることを、努力すること。それが大事だと思う。